銀行の中には、グローバルに事業を展開していて海外売上比率が半分に届くような銀行もあれば、拠点とする地域の発展を企業理念として成長し、事業をエリアの中で堅実に進めていくタイプの銀行もある。地方銀行は後者のタイプの銀行であり、例えば横浜銀行と東日本銀行の合併した地銀グループであるコンコルディア・フィナンシャルグループでは、経営理念に「地域にとってなくてはならない金融グループとして・・・」という文言が掲げられている。こうした事業はもちろん日本固有のものではなく、アメリカでも地方銀行は存在している。19世紀にサンフランシスコに設立され、アメリカ西部を対象にビジネスを行う地方銀行として始まったウェルズファーゴ(今も自らの企業責任として「地域を強化するための解決策を作り出すこと」を掲げている)や、ミネソタ州ミネアポリスに本拠を置くUSバンコープ(貸出の8割以上をアメリカ国内の31州で出している)がその代表格であり、彼らは成長の末に、2020年6月末時点でアメリカの商業銀行の資産ランキングでいずれもトップ5に入っている。彼らのビジネスは、2019年12月期に自己資本対比での利益率(ROEと呼ばれる)が10%を超える高収益なビジネスであり(10万円を投資したら利益が毎年1万円以上出てくるということ)、日本で地方銀行の危機が報道されているのとは対照的である(日本の最大の地方銀行グループであるコンコルディアホールディングスは、2020年3月期にROE 4.7%である)。また、人件費を従業員数で割った従業員あたり給与も1.5倍ほどの差がある。この差がどこからきているのか、改善は可能なのか、日本の各地を代表する地方銀行を並べて比較・分析するのが本レポートの目的である。構成として、①はじめにアメリカの上記2行と日本各地の地方銀行を並べて財務データの比較を行い、②次に経済環境や事業の手法など、事業の主要な構成要素をみて差異を分析する。